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11月, 2017の投稿を表示しています

文庫本:知的人生のための考え方

わたしの人生観・歴史観という副題で,渡部昇一氏逝去直後の2017年6月にPHP新書から刊行された氏の著作.『渡部昇一の人生観・歴史観を高める辞典』1996年,および同著の改題出版『わたしの人生観・歴史観』2007年,を改訂・改題したものである. 第一部:人生観を高めるための十五の視点,および 第二部:歴史観を高めるための十九の視点,の二部構成. 教養人などから嫌われるこのような教訓的な書物を書く根拠について述べる.明治期の日本人には未だ出世のルートが明瞭に見えなかったが,日露戦争が終わった頃からは出世するために通らねばならないルートが明確にできてきた.海軍のトップになるなら,旧制中学→海軍兵学校→海軍大学,しかも良い成績でなければいけない.東大を出てエリートコースを歩むようなひとには人生を考える必要などなかったかもしれないが,戦後すぐの上智大学文学部で学んだ著者には人生の先のほうは全く見えなかったので,人間や人生をあれこれ考える本に惹かれた.著者の人生論的な興味も,多くの人が前途の平坦なルートが見にくいと感じるような時代には,多少のヒントとなるかもしれない.日本史については,著者が比較的若い頃から外国で生活したことや英文科の恩師のおかげで日本史や日本文学などへの関心を維持してきたことによる.ある年代の日本人は,かなりの知識人でも,戦前の日本の置かれた状況の記憶もなく戦後は東京裁判史観のみ教えられて育った.1970年安保闘争の全共連などの言論を聞き流せなくなった.外国の新聞などの堂々とした報道に対して日本のマスコミの報道の卑屈さに腹がたつこともあった.本書はこのような背景から生まれたのである. 第一部  人生観を高めるための十五の視点 「自分探しの旅」 :源平の戦いの頃は,「やあやあ我こそは..」と自分の祖先から説き起こして父に至り自分はその子であると,「自分がいかなる者であるか」を生物的・社会的に規定すればよく,「自分とは何ぞや」といったことはほとんど問題にならなかったに違いない.ごく最近まで,「私はA社の社員である」からA社の繁栄につながるように献身することが自己実現であり生きがいであった.ところが現代ではそうでなくなってきた.会社の規則という自分の外側にある価値体系に浸っていれば生きがいのある時代は崩れ去ろうとしている.外側の価値体系が崩れると,人は「自分の内側...

文庫本:〈新版〉日本語の作文技術

 本田勝一:1931年,信州・伊那谷生まれ.朝日新聞編集委員を経て『週刊金曜日』編集委員. 野良良三著:日本語作文術は本著を参考に書かれている.そこに含まれていない本書の収録内容から,重要と思われる事項を抜き出して要約した. 接続助詞の「が」 :逆接条件だけに使われているのではないのが問題である.反対でもなく,因果関係でもなく,「そして」という程度の,ただ二つの句を繋ぐだけの使い方がある.例えば,「少し脱線するが-」のような場合は,一旦文を切って,「少し脱線する.」と文を切るべきである. 並列の助詞 :英語では,「クジラ・ウシ・ウマ・サル and アザラシは哺乳類の仲間である」と書くが日本語でこれと同じように書くとすわりが悪い.「クジラとウシ・ウマ・サルとアザラシ」と書くのが本来である.「イヌとネコとサルがけんかした」はイヌとネコ・サル連合がけんかしたニュアンスを持つが,「イヌとネコとサルとがけんかした」であれば三つ巴のけんかであることを伝えることができる. 無神経な文章 :直接的には正しく書かれた文章であっても,読者を引っぱっていく力に欠けると途中で投げ出されてしまって,結果的に「わかりにくい文章」と同じになってしまう問題がある.つまるところ文章が無神経に書かれている場合である. [1]紋切型:決まった表現に終始して真実を捉えていない文章になりがちである. [2]繰り返し:文末の表現が同じ文が繰り返されると鼻についたりいやみが出たりする. [3]自分が笑ってはいけない:著者の感情を表現せずに対象を素直に伝えよ. [4]体言止めの下品さ:せまい紙面に記事を押し込む新聞で発達したのでは?軽佻浮薄な印象を与える. [5]ルポルタージュの過去形:過去形で書くと現場にいないで机の上で書いているという印象になる. [6]さぼり敬語:「あぶないです」のように用言のあとに「ダ」や「デス」の連用形・終止形・連体形は接続しない.「危険です」か「あぶのうございます」が正しいが,許容範囲に入れる場合もある. リズムと文体 :論理性と「わかりやすさ」だけで文章を考えるのであれば問題にならない小さな語句の違いでも,文体とかリズムのことを考慮すると大きな違いとなる.ときには原則から外れてもリズムを整えることを優先することによって良い文章になることもある.朗読しながら書くよう心掛けるとよ...