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12月, 2025の投稿を表示しています

象は鼻が長い

  「象は鼻が長い」 大学2年の頃,教養科目の英語の授業で英作文の問題集をやる時間があった.記憶によれば,稲積さんという先生で,たしか東大の英文科を出たけれど仕事が無くて語学の教師をやっているなどと言っておられた.それはともかく,「象は鼻が長い」を英文にせよという問題で,かなり長時間を費やした記憶が今でも残っている.先生の名前まで覚えているので,よほど強く印象に残ったのだと思う.授業では,指名された学生が黒板に解答を板書する.それに対して,先生がコメントしていく訳だが…冠詞や単福数の間違いに始まって,それを踏まえた別の学生による解答が出て,また,それに対する先生の指摘が続き,よく覚えてはいないけど,30分ぐらいやた気がする.正解として”Elephant has a long trunk"に至ったというのがおぼろげな記憶だが,その後に英語話者との会話で試したこともない. 近年は,日本語に主語は不要という話を時おり耳にするようになる.10年ぐらい前だろうか?日本語には,述語で終わるという以外に大した文法の決めごとが無いということを,何かの新書本で読んだ.英語などと違って,語順はかなり入替え可能だが,特に科学技術的な文章は,なるべく多義的な解釈を排除する順に並べる方が良いという訳だ.それで,「〇〇は~」というのは主語を表すのではなく話題の提起だというのである.確かに主語のない和文例は枚挙にいとまがない.しかし,自分が学生の頃は,むしろ,日本語のそういう特徴は,日本語の非論理性の象徴だという見解が,当時の母校の教員達も盛んに述べていた.論文を執筆する際に,日本語で書いたものを英訳するよりも,初めから英文で書く方が論理的な英文が書けるというのである.まぁ,そういう側面が無いとは言えないかもしれない.留学など科学先進国での経験豊富な学者にとっては,むしろ自然な発想なのかもしれない.しかし,大方の日本人は母語たる日本語で考え,その思考を持って知的活動を拡大していく訳だ.小生の拙い経験からすれば,最初から英文で書いた文章は,所詮自身の英語力の限界を超えることはできない.そのギャップについて,当時からおぼろげな疑問を持ってはいた.一方で,明治期に西洋の学術用語を懸命に和語に翻訳した先人の苦労話も伝え聞いていた訳だ.今日,大学の授業を母語で受けられるのは,そういう先人達のお陰...

文庫本:税の日本史

京大の諸富先生による税制視点の日本史概観である.期待に違わず大変興味深い.諸富先生の教科書は格調高すぎて積読状態のところ,この文庫本は改めて日本史の理解を深めるのにとても有意義であった.ここに概要を記録しておく. 税は共同体で稲作をおこなった弥生時代まで遡ることができるようだ.「タチカラ」「ミツキ」「エダチ」と呼ばれる3種の貢納があったらしい.タチカラは田の力で稲など田で採れる穀物,ミツキは繊維製品やニエという山野河海の産物,エダチは古墳や宮殿などを造る労働である.やがて律令税制が整備され,これらはそれぞれ,「租」「調」「庸」となる. 律令税制は大化の改新を期に整備された訳だが,これは白村江の敗戦を受けての防衛力整備や全国的な大規模造営事業による国家荘厳費を賄う必要性によるものだという.ここで,我が国初の貨幣である和同開珎を発行し,通貨発行益も得ているようだ. 一方で,班田収授制では経済発展の動機が生れず,墾田永年私財法によって荘園公領制へ移行する.私有財産化した農地を守るため,領主は農地を有力者に寄進して自らは現地を仕切る受領となる.やがて,租・調・庸は租と同様に土地に課される税に転化するとともに,現地を警護する武士が発生してくる.東国武士をまとめた鎌倉幕府が登場すると,受領に代って地頭を送り込むが,税制としては荘園公領制を引き継いだ訳だ. ここで蒙古襲来となり,国土防衛のために多大な戦費が費やされたのだが,得るものは何も無かった.ここで新興の商工業や流通・金融業に課税して御家人に恩賞を与えることができれば,幕府は延命できたかもしれない.しかし,そういう流れは断ち切られ,鎌倉幕府は滅亡する.代った室町幕府の支配地は小さかったものの,段銭・棟別銭(建造物造営財源),地口銭(不動産課税),守護出銭(守護の自発的寄付),土倉役・酒屋役(金融業・酒造業課税),津料・関銭(通行税),分一銭(不動産譲渡課税)など,あらゆる税を開発するとともに,日明貿易を独占することで財源を確保する. 太閤検地は中世の税制を根本的に変え,土地の所有者=耕作人=年貢の負担者という「一地一作人」体制を整え,石高(生産量)を定めて課税した.蔵入地(直轄地)からの年貢に加えて,銀山・金山で得た金銀の運上金,直轄都市での営業税,朱印船貿易の収入が財源となる.この構造はそのまま江戸幕府にも引継がれた.しか...