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100分で名著:「野生の思考」を観る

 NHKアーカイブズ100分で名著,レヴィ・ストロース「野生の思考」を観る.2年ほど前に放送された番組である.大学の教養科目で面白いと思った科目のひとつが文化人類学,その授業でレヴィ・ストロースの名が非情に頻繁に名前が登場した.あらためてその大学者の思索を追うことができた.番組は4回シリーズ,人類学者の中沢新一氏が,構造主義,ブリコラージュ(日曜大工),神話の論理,日本に生きる野生の思考,という流れで解説する.都合100分の試聴で名著の論旨が大筋把握できるなら好都合かもしれぬ.

科学技術を生業とする我が身としては,仮説の検証を繰り返して真実だけを取り出す科学的方法を大学で学んだと信じていた.しかしながら,実際にものづくりに向き合うと,真実だけではつくり上げられないことがよくある.その場で利用できるものを適宜組み合わせて何となくつくってしまうことが実際にある.それをまた,別の機会にアレンジして使いまわすこともある.やっつけ仕事だと反省するのだが,こういうのがプリコラージュではないかと思ったりする.

こういう思考方法は石器時代まで遡り,それによって人類は神話や呪術で社会秩序を維持しながら様々な道具や技術を開発して文明基盤を発達させてきた.自然と人間を対比させ自然を征服しようとする西洋文明は,科学という実に強力な思考方法を生み出した.この科学も,実は基本的には呪術(オカルト)と同じ思考方法であって,ただ適用対象が違うだけなのだという.科学技術は目的に合致した機能を持つものを大量に生産するのに向いている一方,目的以外の事象とのバランスを見失ったりして,環境破壊などの問題も生んでいる.

また,レヴィ・ストロースはこの著書で,計算機がおこなう情報検索がプリコラージュであると認識し,将来の人類が科学的思考だけでなく,人類が文明の黎明期から持合せて来たプリコラージュの思考方法をあらためて体系的に理解すべきだと考えたらしい.人間を自然の一部だと考える日本のものづくりは,高度な科学技術とプリコラージュがうまくバランスしている貴重な一例だと述べている.自然の持つ特徴をうまく引き出そうとするのが日本文明の特徴であるという.その特徴は日本料理にも表れていて,分割主義という特徴があると指摘している.端的なのは刺身,魚の切り身を混ぜずに並べることで美しい盛り付けを実現している.この特徴は市場の商品配列にも通じており,多くの外国人観光客が築地市場を訪れるのは,無意識にその貴重な特徴に気づいているからではないかというのは中沢新一の解説である.

無意識のうちについ懐いてしまう西洋文明崇拝の文明進化論を根底から考え直すレヴィ・ストロースの思考,学生当時に目のうろこが取れた気になった晴れ晴れとした想いにいま再び浸ったのであった. 

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