先週ランチの後に立寄った本屋で見かけた文庫本に興味を惹かれて街の図書館で借りてきた.
この本には書かれていないが,科学は数量化と再現性を基本とし,現象を安定して記述又は制御する手法であると理解している.科学に立脚した技術を科学技術というが,技術者が向き合わねばならない問題には,必ずしも科学的手法では解けない領域が含まれている.そんな領域の課題は美学や哲学等の非数量的な思索によって解決したりする訳だ.ことものづくりには,そんな職人芸的で科学的にはグレーな部分が付きまとう.そこを何とか科学的に扱う工夫によって,科学的手法の適用領域が拡大して来た一面もある.数量化理論などもその好例かもしれない.
医学の世界にも似たところがあるようだ.こと命の生死に関わると,オカルトの領域とのせめぎあいになりがちである.哲学から医学へ転身した脳神経内科医の臨床体験を基にしたエピソードを起点に,体外離脱体験,臨死体験が語る暗いトンネルや神々しい光の世界,身体の死と脳の死がもたらす曖昧な生死の境界,悲嘆幻覚による死者像の幻視,記憶の解離や憑依,等について考察されている.いずれも,魂や心の在りかや,自我が如何なる自然現象によって生じているのか,といった問題に向き合う手がかりを示してくれるように感じた.脳科学とVR技術が発展する昨今,脳と身体の外にまた,我々の意識の在りようを複雑化する装置が加わろうとしている.対外離脱体験の模擬等は既にVRで実現しつつある.死に向き合う心構えはともかく,生死の狭間に溺れないよう脳の活動の理解を深めておくべしと興味深く拝読した.

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