夏の関西は蝉の声がうるさいと承知している.その原因は主な蝉の種の違いだと言われており,経験的にも間違いないと判断する.しかし,実際にはどうなんだろうか?
「あなたの街で1番聞こえるセミの声」を訊ねたあるアンケート調査によれば,関東ではミンミンゼミが優勢,関西ではクマゼミが優勢との結果がある1).アブラゼミはかなり全国的に分布しているようだ.一方で,関東のセミでいちばんうるさいのはアブラゼミだとの報告がある2).この報告には,アブラゼミとクマゼミの測定値は,それぞれ70~80dB,80~90dBだとされており10dB程度の差があるが,測定方法や用いた周波数重み等の詳細は不明である.数値の出所を探してみると文献3)にクマゼミの80~90dBの出所が記載されていた.長居公園で測定した音圧レベルと記載がある.原典は入手できておらず未確認だが,根拠はありそうだ.文献3)によれば,近年大阪市内ではアブラゼミが激減し,7割がクマゼミと言われているようだ.騒音公害の原因となる都市害虫になっているという.また,クマゼミは東京へも進出しつつあり,実際にお台場でクマゼミを捕獲した状況についても報告されている.
一方の関東のセミの声については,文献4)にデータがある.遠方からセミ群の鳴き声を道路交通騒音とともに測定した結果であるが,60dBA程度の音圧レベルである.「アブラゼミ」単独と「アブラゼミ+ツクツクボウシ」のデータが比較されており,アブラゼミの成分が5kHz~8kHzの高い周波数領域であるのに対して,ツクツクボウシが入ると上記に加えて1kHz~4kHzのやや低い周波数成分も増加する.経験的にはミンミンゼミもツクツクボウシに近い傾向があり,クマゼミは更に低い(もう少し人の音声に近い)周波数領域に主成分が移行すると推察する.
ありもののデータで疑問を解消するには至らなかったが,解明の端緒はつかめたように思う.うるさい関西のセミの声を聞いて育った関東暮らしとしては,クマゼミが関東に大きく進出しないことを願う.
1)ウェザーニューズ「アンケートで検証!あなたの街で1番聞こえるセミの声は?」2020.08.31:
2)Lucen Techno 「夏の風物詩 セミの声,騒音レベルを測ってみた」2021.10.08:
3) 川上裕二「東京お台場地区(江東区青海)で捕獲したクマゼミの記録」,Urban Pest Manegement vol.8,2018.06.20
4) 落合博明「蝉の声・虫の声」,騒音制御 vol.20, No.1,1996

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