しばらくぶりに「謎の平安前期」という新書本を図書館から借りて来る.著者は歴史博物館にお勤めの学芸員である.平安時代にはあまり興味が無かったのだけど,序章を読むと意外に面白そうだ.
平安前期は,思いのほか社会のしくみが変って生産力が向上したようである.奈良時代の公地公民以外の民有地を拡大し,地方の事情に任せた今でいう民活路線に近い方向へ変化したらしい.その結果,地方の荘園の生産は向上して管理者として地方へ赴任する下級貴族は収入が増す.下級貴族は再度の赴任を目指して任命権者の上流貴族に貢ぐので,実際に潤うのは上流の大貴族である.大貴族は極楽浄土を願って寺社に寄進する.社寺も所有地での事業を拡大する.かくして,奈良時代に行政の実務を担っていた下級官吏は貴族や寺社の財産管理人となる.
また,各地の治安維持を担った軍団を廃止して地方豪族の子弟である「健児」のみが警察力となる.治安維持もいわば民間委託してしまったことで,利権を自衛する武士が台頭して鎌倉時代へ向かうのが流れである.「民間でできることは民間で」という最近の政治家のフレーズを思い出す.このような社会の変化と共に,トップダウン方式で導入して来た中国文化の影響は薄くなり,日本独自の社会文化が醸成されたという訳だ.鎌倉幕府は縄文文化の再興であるとの見方とも符合する.更に読み進んでみたい.

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