先日のこと,珍しく騒音制御工学会のシンポジウムを聞いてみた.人間の活動が生じている騒音が野生生物にどう影響しているかについて,数名の研究者が登壇した.世界的にネイチャーポジティブ(自然再興)の政策がある中で,日本では,この分野の研究があまりにも見られないとの問題意識を抱いていたところである.多少はそんな研究者が居ることが分かり,ちょっとホッとした面もある.しかし,我々が発生している騒音は,思いのほか陸水の野生動物のコミュニケーションを妨げ,苦痛を生じさせ,生存を脅かしていることが,あらためて分かった.
そこで、アニマルウェルフェアという言葉が登場した訳だ.訳すと動物福祉なんだろう.ググってみると日本動物福祉協会という公益社団法人のウェブサイトに行き当たった.読んでみると,人間の保護下にある家畜を対象にしており,どうやら野生動物は保護の対象外のようだ.家畜福祉をSDGsの文脈に位置付ける視点もあるようだが,それでは旧来の産業施策あるいは家畜衛生学の延辺でしかなく,自然再興の考え方とは相容れない.SDGsのうちとはちょっと言い切れないようにも思う.
動物の何に配慮せねばならないかといえば,それは人間と同じく痛みや苦痛を感じるからだという話を聞いたことがある.タコは痛みを感じるか?自ら足を捨てて逃げることもあるというタコの苦痛への思慮である.そんな訳で,欧州の一部の国では,タコを生きたまま茹でてはいけないとの法律があるらしい.もちろん人間はタコを食べてしまうのだが,命を頂くに当たっては安楽死を願う気持ちは人間と同じという訳である.カニにイカやロブスターも,タコほど強くはないが,感覚があるそうだ.それでは植物はどうなのか?という話もある.植物にも,生きながらえるための知能があると聞くところだ.
だけど...自然の生態系において,ある動物が他の動物を食べることはごく普通である.彼らは食べられる側の苦痛を考えて食べているだろうか?そんな疑問を抱いたりもする.やはり,野生の行為は許されるのだろうか?だけど,それもやはり,人間の勝手な考えではないのか?それでも,苦痛を感じさせたまま,生存環境を傷つけ,生存を脅やかすのは,やはり生命倫理にもとるのだろう.ここは,倫理学の知見が必要だ.
<無脊椎動物で最も複雑な神経系を持つタコの痛みについて研究してきた米サンフランシスコ州立大学の研究チームは「タコには身体的および感情的な痛みがある」との研究論文を発表した......>
痛みは、単なる有害な刺激への反射ではなく、苦痛やストレスをもたらす複雑な感情状態である。脊椎動物にはこのような痛みの身体的・感情的側面があると考えられているが、神経系がより単純な無脊椎動物に同様の機能があるかどうかはまだ十分に解明されていない。
研究チームは、タコの痛みのメカニズムについてさらに研究するべく、実験マウスの痛覚実験と同様の手順を応用してタコの痛覚実験を実施し、その自発痛関連行動と神経活動を測定。2021年2月21日にオープンアクセスジャーナル「アイサイエンス」で「タコには身体的および感情的な痛みがある」との研究論文を発表した。
さらに、鎮痛剤のリドカインをタコに投与した。酢酸を注射されたタコは、リドカインを投与されて痛みが和らいだ「部屋」をすぐに好むようになったが、生理食塩水を注射されたタコは、リドカインを投与された「部屋」をそれほど気にする様子がなかった。
研究論文では、「一連の実験結果は、タコの痛みに持続的な負の感情状態があることを示している」とし、「頭足類に意識や感覚があることを示す証拠はないものの、今回の痛覚実験で示されたタコの反応は、哺乳類にみられる痛みと類似している」と結論づけている。

コメント
コメントを投稿