2000年頃に始まった人類学の新潮流を追うと,日本人の成立ちも見えて来るという.その成果によると,アフリカ東部に居たホモ・サピエンスが移動を始め,4万年ほど前に日本列島に辿り着いたようだ.約2万5千年続く旧石器時代を経て,約1万6千年前から土器を使う縄文時代になる.約3000年前から大陸の農耕民が新たに流入してくるようになり,縄文人と弥生人が入り混じって暮らす弥生時代に入る.
縄文時代の暮らしはとてもたいへんだったと,国立科学博物館の鎌田館長は云う.農耕で飛躍的に大量の食糧が確保できるようになった弥生人は人口を大きく増やし,人類学的には縄文人を飲み込んで行ったという.結果的に,現代の日本人のDNAの9割は弥生人から受け継いでいるそうだ.
縄文人と弥生人は外見にも差があったらしい.それ以前に,縄文人も全国一律という訳ではなく,東日本では樺太経由で日本に入って来た系統と,西日本では南方から来た系統が多いなど地域差が大きかったようだ.平安時代頃までは,近畿や西日本では弥生系の,東日本の特に孤島や孤立集落などでは縄文系の人々が多いなど,かなりの多様性があったという.江戸時代頃にはかなり均一化したようだが,東日本ではマタギなど縄文色の濃い人々がかなり最近まで存在した.ゲノムの縄文人度が高い関東~東北や出雲周辺と鹿児島は,古代史で討伐された地方と重なっている.自然人類学のゲノム解析データと歴史学の知見を擦り合わせることで,先史時代が科学的に解明されていくことを期待する.
ヤマト政権が成立して以来,日本という国の中で交雑が進み,自然人類学的な地域差は次第に均一化してきたようだ.この間,世界各地に民族国家が形成され,人類の地域差は拡大する方向に進んで来たのだが,大航海時代以降は,とりわけ近年のグローバル社会では,国家の領域を超えた人々の交流が飛躍的に拡大している.このまま年月が進んでいくと,世界の人類は均一化の方向に進むことが予想されるという.これぐらいの時間スケールで世界を眺めて見ると,民族や文明・文化の受け止め方も,変ってくるように思われる.日本人というアイデンティティを捨て去るのは現実的に困難だが,多様性を受入れる素地にはなる気がする.
「Jリーグが出来てサッカーが体育科の教育から大勢が日々楽しむものになったように,科学も教育を脱して大勢が日々楽しむものにしないといけない」と国立科学博物館の館長が云う.これにはとても共感する.ゲノム解読の技術は,考古学や歴史学の世界を大きく塗り替えたようだ.しかし,その歴史は未だ浅い.もう暫くすると,有史以前も含めて,人類の過去を物証に基づいて精密に見ることが期待できそうだ.ヤマト建国の謎も解けてくるだろう.本当に面白いと思う研究をやって,その結果を展示しない限り,観る人は面白いと思わない.そういう心意気で科学博物館の運営をなさっているそうだ.
還暦が間近になってから,仕事で気候変動への対応に向き合うようになる.霞が関出向の2年間は,半ば書生気分で何の役に立つのか分らぬままに,地球温暖化対策に係る一般教養を興味のままに拡げることができた.社業のことは一旦忘れ,思いの外楽しく過ごした2年間となる.勤め先に戻って1年足らず,この間に社業がいかに気候変動に対応しているか説明して来たのだが,このたび社名が2024年の気候変動Aリストなる有力サイトに載ることになった.いろんな方々の真摯な協力の賜物で会社としては喜ばしいところである.しかし,楽しかったか?と問われるとそうでもない.館長が云う科学を日々楽しむ暮らしぶりを,どうすれば取り戻せるだろうか?これから20年ほどの暮らしぶりをどうすれば良いか?そろそろ真面目に考えておかねばならない.そんな想いで,20年ぐらいぶりに国立科学博物館へ行ってみようと思い立つ.興味に任せて受験に役立たない知識にかまけた中高時代の楽しさが思い出せるだろうか?
京成上野駅で下車して上野公園を進み,先ずは西郷さんを仰ぐ.公園の掃除はボランティアなんだろうか?結構大勢でやっている.












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