国会議員の定数削減という議論が出ている.身を切る改革が必要とのことだ.しかし,定数を10%ぐらい削減したところで,大勢に影響ない気もする.無論,個々の議員や少数政党にしてみれば死活問題なのかもしれないが,政局に影響が及ぶほどの変化が生じるのだろうか?
そもそも,現行の選挙制度は衆議院・参議院とも比例代表選挙と選挙区選挙の2本立てである.構成が似た議院が二つあることで,参議院不要論を唱える向きもある.個人的には,衆議院は民意を代表する比例代表選挙のみ,参議院は無所属でも立候補できる地域(都道府県等)代表で構成する選挙区選挙のみにするのが良いのではないかと考える.そこで,衆・参の直近3回の選挙結果から,衆議院の比例代表選挙のみ,参議院の選挙区選挙のみを抜き出して,議院の構成がどうなるか試算してみた訳だ.
参議院は選挙区選挙のみにすると定数が150ほど,衆議院は比例代表選挙のみにすると175ほどになる.諸外国の例と比較すると,衆議院の定数175は少なすぎるかもしれないので,仮に2倍すれば350ほどになる.これぐらいまで削減すれば,少しは身を切った感が出るだろうか?最初の表に示す衆議院の議員数は,左列の数が実際の選挙での当選数,右列がその2倍の数である.尤も比例代表選挙で採用するドント式だと,定数を2倍しても当選者数は丁度2倍になるとは限らず,ブロックごとの定数も2倍とは限らないのだが,その影響は無視して表には2倍の数を表記している.参議院の議員数は,左列が実際の選挙での当選数,右列は前回の選挙の当選者数と合算した数を示している.
結果を見ると,与野党の議員数の構成に,政権の構成が変わるほどの影響はないようだ.政権与党の議員数をオレンジ色,今回与党から離脱した公明党の直近の議員数を黄色,のハッチを掛けている.現行の両院で,少数与党が国民民主党か公明党の協力がないと多数派にならない状況も概ね同じである.30年ほど前の選挙制度改革で,政権交代可能な制度と小選挙区制を導入した訳だが,結局は比例代表制との併用になったこともあり,現在は逆に多党化が進んでいる.一方で,特に自民党のような大政党では執行部の権限が肥大化するなど,小選挙区制の弊害も目立つようだ.いっそ中選挙区制に戻せばどうかとの議論も耳にする訳だ.
ちなみに,比例代表選挙の方法にもいろいろあって,拘束名簿式とはせず,参議院の比例のように政党内での個人名得票数で名簿順位を決める方式だと,矛盾は少ないだろう.現行通りブロックごとの比例代表選挙にするならば,最も多い近畿ブロックの定数を2倍にしても,参議院の比例代表選挙の定数50と同等程度の56なので,それほど違和感はないように思う.ドイツのように,議席数を得票率に比例させつつ小選挙区と併用する方式もあるようだ.しかし,この場合は小選挙区の当選者が得票数に比べて多い政党がある場合に,全体の議員定数を増して議席数比率を調整する必要が生じる.全体の議員定数を固定しても,小選挙区の数を全体の議員定数に比べて少なく(例えば1/3~1/2程度に)抑えておけば,概ね得票数の比に近い議席配分になるかもしれないが,それは現行の小選挙区比例代表併用制の範疇となる.
とのかく,米国のように全てを小選挙区制にするとか,逆に全てを比例代表制にするなど,丸っきり違った選挙制度に変えない限り,与野党の構成が変わるほどの影響は生じないのではないのか?そんな気がする.それで,衆議院を民意集約型の小選挙区選挙のみ,参議院を少数意見も反映する比例代表選挙のみにした場合も試算してみると,確かに小選挙区とした衆議院で影響は大きくなるが,参議院があることで,与野党の構成は変らない.更に,衆参とも比例のみにしたところで,そんな状況に大きな変わりはない.衆は小選挙区のみ参は選挙区のみにした場合のみ,自民単独政権の可能性が高まるようだ.つまるところ,選挙制度の議論に長時間を費やすのは,不毛な議論のようにも思える.あるいは,自民党の総裁選挙の方法の方が,政権選択に影響があるのかもしれない.


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